私が小学生の頃、父がよく「中光(なかみつ)のかまぼこ屋は昔映画館じゃったんで。」と話しをしてくれていた。この頃は映画というと市内の東宝や東映まで、正月には定番の百恵ちゃんやゴジラを観に行っていた。
そんな話しをカフェに来てくださる地元のマダムとしていると、なんと牛窓には映画館が3つもあったと教えてもらいとても驚いた!
岡山県の南部、東寄り。自然豊かで風光明媚、観光地として人気のある港町。
公共の乗り物は少なく、決して交通の便が良いとは言えない町、牛窓。
そんな場所に半世紀以上前に劇場が3つもあったとは俄かには信じ難かったが、
潮待ち・風待ちと呼ばれ物流の港として栄えたこの町の歴史に、人の往来の活発さを想像させられる。
フェリー乗り場近くにある中光商店は、地元の豊富な食材を使ったとても美味しいかまぼこ屋さん。私は親について買い物に行くのが楽しみだった。広く大きな作業場を見るのが好きで、どこにスクリーンがあって、映写室からどんな作品が流れていたのか、想像するだけでワクワクしていた。
名前は『オリーブ映劇』。
そしてここからさほど離れていない場所にも。目の前が漁港の現銀行。
名前は『美奈登劇場』。
『港』ではないのもなんとなく謎めいていて興味をそそられてしまう。
そして3つ目が『牛窓東映』。残念ながらまだ場所はわかっていないが、きっとこの並びだ。
マダムが「良い役者も来ていて歌舞伎も観に行った事があるの。」と言っていたが、映画だけでなく多様に楽しめていたのがなんとも羨ましい。
以前はテレビのロードショーでも雄弁な解説者達が自分が生まれる前の名作や西部劇などを紹介してくれていたが、近年それも無くなり淋しい。
この先またこの港町に映画館が復活してくれないかな。
時に私は荒野を馬で駆け周り酒場で仲間とスコッチを飲む。世界を救う正義になり、愛する人の敵になる。
波瀾万丈に時代を生きせてくれる大きな扉をここで開けてみたい。
参照
消えた映画の記憶・全国映画館総覧
1953年閉館 美奈登劇場
1960年閉館 牛窓東映・オリーブ映劇
(スタッフ・まるちゃん)
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